出題の重要度 ★★☆
「賃借人の原状回復義務」をわかりやすく解説

原状回復義務とは?
・原状回復義務とは、賃借物を受け取った後に生じた損傷を、賃貸借の終了時に元に戻す義務のこと(民法621条)。
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
通常損耗と経年変化は含まない
・条文のかっこ書きで、次の2つが原状回復の対象から外されています。
| 除かれるもの | 具体例 |
| 通常損耗 | 家具を置いた床のへこみ、日常生活でついた小さな傷 |
| 経年変化 | 日照による壁紙の変色、設備の自然な劣化 |
【補足】これらの負担は賃料に織り込まれている、という考え方です。債権法改正でこの結論が明文化されました。

借主に責任のない損傷も外れる
・損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときも、原状回復義務を負いません(621条ただし書)。
・地震や近隣の火災で壊れた場合などがこれにあたります。
附属させた物の収去義務
・賃借人は、受け取った後に附属させた物があるときは、終了時にこれを収去する義務を負います(民法622条・599条1項)。
・ただし、分離できない物や、分離するのに過分の費用を要する物は収去しなくて構いません。
【補足】原状回復義務(損傷を直す)と収去義務(付けた物を外す)は別の義務です。混同しないようにしましょう。
敷金との関係
・原状回復に費用がかかったときは、その分が敷金から差し引かれて返還されます。
・逆にいえば、通常損耗や経年変化の分まで敷金から差し引くことは、原則としてできません。
練習問題
・次の記述について、正しいか誤っているかを考えてみましょう。
| 記号 | 記述 |
| ア | 借主は、契約が終わったとき損傷を元どおりにする義務を負う。 |
| イ | 家具を置いた床のへこみも、借主が直さなければならない。 |
| ウ | 日焼けによる壁紙の変色は、原状回復の対象になる。 |
| エ | 借主に責任のない原因で生じた損傷は、原状回復しなくてよい。 |
| オ | 借主は、自分が取り付けた物を取り外す義務を負う。 |
練習問題の解説
・解答は次のとおりです。
| ア | イ | ウ | エ | オ |
| ○ | × | × | ○ | ○ |
ア ○ 正しい
・そのとおりです。賃借物を受け取った後に生じた損傷について原状回復義務を負います(民法621条)。
・借りた物を返すときは、借りたときの状態に戻すのが原則です。
・ただし通常損耗と経年変化は損傷から除かれます。原則と例外をセットで押さえましょう。
イ × 誤り
・直す必要はありません。通常の使用収益によって生じた損耗は除かれます(民法621条)。
・正しくは「通常損耗は原状回復の対象外」です。その分は賃料に織り込まれていると考えられています。
・ふつうに住んでいれば避けられない傷みかどうかで判断すると分かりやすくなります。
ウ × 誤り
・対象になりません。経年変化は損傷から除かれています(民法621条)。
・正しくは「経年変化は原状回復の対象外」です。時間の経過で当然に生じる変化だからです。
・通常損耗と経年変化は、改正で条文に書き込まれた最頻出のポイントです。
エ ○ 正しい
・そのとおりです。賃借人の責めに帰することができない事由による損傷は除かれます(民法621条ただし書)。
・地震や近隣からの延焼などが典型です。責任のないことまで負わせるのは酷だからです。
・除外されるのは通常損耗・経年変化・責任のない損傷の3つ。並べて覚えましょう。
オ ○ 正しい
・そのとおりです。附属させた物の収去義務を負います(民法622条・599条1項)。
・原状回復義務とは別に、付けた物を外して返すことが求められます。
・分離できない物や過分の費用がかかる物は例外です。ただし書も確認しておきましょう。
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