出題の重要度 ★★☆
「賃貸物の修繕と費用の償還」をわかりやすく解説

賃貸人の修繕義務
・賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負います(民法606条1項)。
賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
賃借人が自分で修繕できる場合
・賃借人が自分で修繕できるのは、次の2つの場合だけです(民法607条の2)。
| 場面 | 内容 |
| 賃貸人が修繕しない | 通知したか賃貸人が知ったのに、相当の期間内に修繕しないとき |
| 急迫の事情 | 水漏れなど、待っていられない事情があるとき |
【補足】この規定も債権法改正で新設されたものです。それまで明文がなかったため、そのまま出題されやすい条文です。

必要費は直ちに請求できる
・賃借人が必要費を支出したときは、直ちにその償還を請求できます(民法608条1項)。
・必要費とは、雨漏りの修理など、物を通常の状態で使うために必要な費用のことです。
有益費は終了の時に請求する
・有益費を支出したときは、賃貸借の終了の時に償還を請求します(民法608条2項)。
| 費用 | 内容 | 請求できる時期 |
| 必要費 | 雨漏りの修理など、使用に必要な費用 | 直ちに |
| 有益費 | 物の価値を高める費用 | 賃貸借の終了の時 |
【補足】有益費の償還額は、支出した金額か増価額のいずれかを賃貸人が選びます。また裁判所は賃貸人の請求により相当の期限を許与できます。
保存行為を拒めない
・賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人はこれを拒むことができません(民法606条2項)。
練習問題
・次の記述について、正しいか誤っているかを考えてみましょう。
| 記号 | 記述 |
| ア | 貸主は、使用に必要な修繕をする義務を負う。 |
| イ | 借主の不注意で壊れた場合も、貸主に修繕義務がある。 |
| ウ | 急いで直す必要があるときは、借主が修繕することができる。 |
| エ | 必要費は、契約が終わるまで返してもらえない。 |
| オ | 有益費は、賃貸借が終わったときに返してもらえる。 |
練習問題の解説
・解答は次のとおりです。
| ア | イ | ウ | エ | オ |
| ○ | × | ○ | × | ○ |
ア ○ 正しい
・そのとおりです。賃貸人は使用及び収益に必要な修繕をする義務を負います(民法606条1項)。
・賃貸借は物を使わせる契約なので、使える状態を保つのは貸主の役目です。
・借主の責めに帰すべき事由による場合は例外になります。ただし書もあわせて確認しましょう。
イ × 誤り
・義務はありません。賃借人の責めに帰すべき事由で修繕が必要になったときは除かれます(民法606条1項ただし書)。
・正しくは「借主に責任があるときは貸主は修繕義務を負わない」です。
・改正で明文化されたただし書です。原則だけを覚えていると引っかかります。
ウ ○ 正しい
・そのとおりです。急迫の事情があるときは賃借人が修繕できます(民法607条の2第2号)。
・水漏れのように待てない事態で、貸主の対応を待たせるのは不合理だからです。
・もう一つは「通知したのに相当の期間内に修繕しないとき」。2つある点を押さえましょう。
エ × 誤り
・直ちに償還を請求できます(民法608条1項)。終了を待つ必要はありません。
・正しくは「支出したら直ちに請求できる」です。貸主が負担すべき費用の立替えだからです。
・終了時なのは有益費の方。必要費と有益費を入れ替えた選択肢が定番です。
オ ○ 正しい
・そのとおりです。有益費の償還は賃貸借の終了の時に請求します(民法608条2項)。
・価値が高まったかどうかは終了時にならないと分からないため、この時期とされています。
・「必要費は直ちに、有益費は終了時に」と対で覚えるのが定石です。
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