出題の重要度 ★★☆
「賃貸人たる地位の移転」をわかりやすく解説

賃貸人たる地位の移転とは?
・賃貸中の不動産が売られたとき、貸主としての立場が買主に移ることを賃貸人たる地位の移転といいます。
前条、借地借家法第十条又は第三十一条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。
賃借人の承諾はいらない
・地位の移転に賃借人の承諾は不要です。当然に移転します。
・賃貸人の義務は誰が果たしても内容が変わらないため、借主の同意を求める必要がないからです。
【補足】譲渡人と譲受人の合意だけで地位を移すこともできます(民法605条の3)。この場合も賃借人の承諾は要りません。

賃料を請求するには登記が必要
・新しい所有者が賃借人に賃料を請求するには、所有権移転の登記が必要です(民法605条の2第3項)。
| 項目 | 結論 |
| 賃借人の承諾 | 不要 |
| 賃料の請求 | 所有権移転の登記が必要 |
| 敷金の返還債務 | 譲受人が承継 |
| 費用の償還債務 | 譲受人が承継 |
敷金と費用償還債務は引き継がれる
・地位が移転すると、敷金の返還債務と費用の償還債務は譲受人が承継します(民法605条の2第4項)。
・賃借人は、預けた敷金を新しい所有者に請求することになります。
【補足】賃借人は貸主を選べない立場なので、敷金の返還先が分からなくなる不利益から守られています。
賃貸人たる地位の留保
・譲渡人と譲受人が「貸主の地位は譲渡人に残す」「その不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する」と両方を合意したときは、地位は移転しません(民法605条の2第2項)。
・その後、譲渡人と譲受人の間の賃貸借が終了したときは、留保されていた地位が譲受人に移ります。
練習問題
・次の記述について、正しいか誤っているかを考えてみましょう。
| 記号 | 記述 |
| ア | 賃貸中の建物が売られると、貸主の地位は買主に移る。 |
| イ | 貸主の地位が移るには、借主の承諾が必要である。 |
| ウ | 新しい所有者は、登記がなくても賃料を請求できる。 |
| エ | 敷金を返す義務は、新しい所有者に引き継がれる。 |
| オ | 貸主の地位を売主に残しておく合意は、認められない。 |
練習問題の解説
・解答は次のとおりです。
| ア | イ | ウ | エ | オ |
| ○ | × | × | ○ | × |
ア ○ 正しい
・そのとおりです。対抗要件を備えた不動産が譲渡されると、賃貸人たる地位は譲受人に移転します(民法605条の2第1項)。
・賃借人が対抗要件を備えていることが前提です。備えていなければ当然には移りません。
・「移転する」と条文が言い切っている点を押さえましょう。
イ × 誤り
・不要です。賃借人の承諾がなくても当然に移転します。
・正しくは「承諾を要しないで移転する」です。貸主の義務は誰が果たしても同じだからです。
・「承諾は不要、登記は必要」という組合せで覚えると混乱しません。
ウ × 誤り
・できません。所有権移転の登記をしなければ賃借人に対抗できません(民法605条の2第3項)。
・正しくは「所有権移転の登記が必要」です。誰に払えばよいか分からず二重払いになる危険を防ぐためです。
・賃借人の承諾は不要なのに登記は必要、という違いが最頻出のポイントです。
エ ○ 正しい
・そのとおりです。敷金の返還債務は譲受人が承継します(民法605条の2第4項)。
・借主は貸主を選べないので、返還先が分からなくなる不利益から守られています。
・同じ条文で費用の償還債務も承継されます。あわせて覚えましょう。
オ × 誤り
・認められます。地位を譲渡人に留保する旨と、譲受人が譲渡人に賃貸する旨を合意すれば移転しません(民法605条の2第2項)。
・正しくは「2つの合意をそろえれば留保できる」です。
・片方だけでは足りません。また、その賃貸借が終われば地位は譲受人に移ります。
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