出題の重要度 ★★★
「手付の額の制限」をわかりやすく解説

手付の額の制限とは?
・手付の額の制限とは、宅建業者が自ら売主となる売買契約で、代金の10分の2(2割)を超える手付を受領できないという規制のことです(宅建業法39条1項)。
宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して、代金の額の十分の二を超える額の手付を受領することができない。
・たとえば代金3000万円なら、受け取れる手付は600万円までです。
適用されるのは業者が売主のときだけ
・この規制は8種制限のひとつです。売主が宅建業者で、かつ買主が宅建業者でない場合にだけ適用されます。
| 売主 | 買主 | 39条の適用 |
| 宅建業者 | 一般の人 | 適用される |
| 宅建業者 | 宅建業者 | 適用されない |
| 一般の人 | 一般の人(業者が媒介) | 適用されない |
【補足】宅建業法78条2項は、33条の2及び37条の2から43条までの規定を業者相互間の取引には適用しないと定めています。39条もこの範囲に入ります。

受け取った手付は必ず解約手付になる
・宅建業者が自ら売主として手付を受け取ったときは、その手付がいかなる性質のものであっても、次の解除ができます(宅建業法39条2項)。
| だれが | どうやって解除するか |
| 買主 | 手付を放棄して解除する |
| 売主(宅建業者) | 手付の倍額を現実に提供して解除する |
【補足】売主から解除するときは「倍額を現実に提供」しなければなりません。口頭で「倍にして返します」と伝えるだけでは解除できません。
解除ができなくなる時期
・手付による解除は、相手方が契約の履行に着手した後はできなくなります(宅建業法39条2項ただし書)。
・基準になるのは相手方が着手したかどうかです。自分がすでに着手していても、相手方がまだ着手していなければ解除できます。
【補足】履行の着手にあたる例としては、売主が所有権移転登記の準備をしたり、買主が中間金を支払ったりする行為があります。
買主に不利な特約は無効
・39条2項に反する特約で買主に不利なものは無効です(同条3項)。
| 特約の例 | 効力 |
| 売主は手付の同額を返せば解除できる | 無効(買主に不利) |
| 買主は履行の着手前でも解除できない | 無効(買主に不利) |
| 売主は履行の着手後は解除できない | 有効(買主に有利) |
練習問題
・次の記述について、正しいか誤っているかを考えてみましょう。
| 記号 | 記述 |
| ア | 宅建業者が売主なら、手付は代金の2割まで受け取れる。 |
| イ | 売主の業者は、手付の同額を返せば解除できる。 |
| ウ | 買主は、手付を放棄して契約を解除できる。 |
| エ | 相手方が契約の履行に着手した後でも、手付で解除できる。 |
| オ | 業者どうしの売買にも、手付の額の制限が適用される。 |
練習問題の解説
・解答は次のとおりです。
| ア | イ | ウ | エ | オ |
| ○ | × | ○ | × | × |
ア ○ 正しい
・・そのとおりです。宅建業者が自ら売主となるときは、代金の額の10分の2を超える額の手付を受領できません(宅建業法39条1項)。
・手付が大きすぎると、買主が手付を放棄して契約をやめる自由を失うからです。
・代金3000万円なら600万円までです。「3割まで」と数字を変える引っかけが出ます。
イ × 誤り
・・誤りです。正しくは、売主の宅建業者は手付の倍額を現実に提供して解除します(宅建業法39条2項)。
・買主は手付を失うのですから、売主も同じだけの負担を負うという釣り合いです。
・「同額を返す」「口頭で倍額を提供すると伝える」はどちらも足りません。現実の提供が必要です。
ウ ○ 正しい
・・そのとおりです。受け取った手付は、その性質を問わず解約手付として扱われます(宅建業法39条2項)。
・契約書に「証約手付とする」と書いてあっても、解約手付として解除できます。
・ただし相手方が履行に着手した後は解除できません。時期の制限とセットで覚えましょう。
エ × 誤り
・・誤りです。正しくは、相手方が履行に着手した後は解除できません(宅建業法39条2項ただし書)。
・準備を進めた相手を、あとから一方的に振り出しに戻すのは酷だからです。
・基準は「相手方」の着手です。自分が着手していても、相手が未着手なら解除できます。
オ × 誤り
・・誤りです。正しくは、宅建業者相互間の取引には適用されません(宅建業法78条2項)。
・8種制限は、取引に慣れていない買主を守るための規制だからです。
・「売主が業者・買主が業者でない」ときだけ働く、という前提を毎回確認しましょう。
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