出題の重要度 ★★☆
「時効の援用」をわかりやすく解説

時効の援用とは?
・時効の援用とは、時効によって利益を受けるという意思を示すことのこと。
・時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができません(民法145条)。
第百四十五条(時効の援用) 時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
援用できる「当事者」
・消滅時効を援用できるのは、債務者本人だけではありません。
| 援用できる者 | その人にとっての利益 |
| 債務者本人 | 自分が負っている債務が消える |
| 保証人 | 主たる債務が消えれば保証債務も消える |
| 物上保証人 | 担保に入れた自分の財産を失わずにすむ |
| 第三取得者 | 抵当権つきの不動産を買った人が抵当権から解放される |
【補足】条文は「権利の消滅について正当な利益を有する者」を当事者に含めています。債務が消えることで直接に得をする立場かどうかが基準です。

援用の効果
・時効の効力は、その起算日にさかのぼります(民法144条)。
・取得時効なら、援用したときに所有権を得るのではなく、占有を始めた時から所有者だったことになります。
・消滅時効なら、時効が完成した時ではなく、時効期間の起算日にさかのぼって債務が消えていたことになります。そのため、その間の利息や遅延損害金も生じません。
時効の利益の放棄
・時効の利益は、あらかじめ放棄することができません(民法146条)。
第百四十六条(時効の利益の放棄) 時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。
| 時期 | 放棄できるか |
| 時効が完成する前 | できない |
| 時効が完成した後 | できる |
【補足】認めてしまうと、お金を貸すときに「時効は主張しません」と一筆入れさせることが常態化し、制度が骨抜きになるからです。禁じられているのは「あらかじめ」の放棄だけです。
完成後に債務を認めたとき
・時効が完成したあとに、そのことを知らずに債務者が債務を承認したときは、その後に時効を援用することはできません(判例)。
・いったん「払います」と認めた以上、あとから「やはり時効です」と言うのは相手の信頼を裏切ることになるからです。
練習問題
・次の記述について、正しいか誤っているかを考えてみましょう。
| 記号 | 記述 |
| ア | 期間が過ぎれば、援用しなくても時効の効果が生じる。 |
| イ | 保証人は、主たる債務の消滅時効を援用できる。 |
| ウ | 時効の効力は、援用した日から生じる。 |
| エ | 時効の利益は、あらかじめ放棄することができる。 |
| オ | 時効の完成後に債務を認めると、もう援用できない。 |
練習問題の解説
・解答は次のとおりです。
| ア | イ | ウ | エ | オ |
| × | ○ | × | × | ○ |
ア × 誤り
・・正しくは、当事者が援用しなければ裁判所は時効によって裁判をすることができません(民法145条)。
・時効で利益を受けることを望まない人もいるため、使うかどうかを本人の意思にゆだねる趣旨です。
・期間の経過だけでは足りない、と覚えましょう。「自動的に消える」は誤りです。
イ ○ 正しい
・・保証人は条文が明記する当事者にあたり、主たる債務の消滅時効を援用できます。
・主たる債務が消えれば保証債務も消えるので、時効で直接に利益を受ける立場だからです。
・物上保証人や第三取得者も同じく援用できます。債務者本人だけ、ではありません。
ウ × 誤り
・・正しくは、時効の効力は起算日にさかのぼります(民法144条)。
・取得時効なら占有を始めた時から所有者だったことになり、消滅時効なら起算日に債務が消えていたことになります。
・さかのぼるからこそ、消滅時効ではその間の利息も生じません。効果の及ぶ範囲まで確認しておきましょう。
エ × 誤り
・・正しくは、あらかじめ放棄することはできません(民法146条)。
・貸すときに「時効は主張しません」と約束させることが当たり前になると、制度の意味がなくなるためです。
・禁じられているのは「あらかじめ」の放棄だけです。完成した後なら放棄できます。
オ ○ 正しい
・・完成後に債務を承認した者は、その後に時効を援用できません(判例)。
・いったん払うと認めておきながら、あとで時効を持ち出すのは相手の信頼を裏切るからです。
・完成を知らなかった場合でも同じです。「知らなければ援用できる」は誤りです。
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