出題の重要度 ★★★
「消滅時効」をわかりやすく解説

消滅時効とは?
・消滅時効とは、権利を行使しない状態が一定期間続いたことで、その権利が消滅する制度のこと(民法166条)。
・「権利の上に眠る者は保護しない」という考え方に基づく制度です。
債権は5年と10年の二本立て
・債権の消滅時効は、次の2つのうち早いほうが到来した時点で完成します。
| 号 | 起算点と期間 |
| 1号 | 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年 |
| 2号 | 権利を行使することができる時から10年 |
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

債権以外の権利
・債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から20年間行使しないときに時効消滅します(民法166条2項)。地上権や地役権などがこれにあたります。
・人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権については、2号の「10年」が20年に伸びます(民法167条)。
【補足】確定判決などによって確定した権利は、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は10年になります(民法169条1項)。
所有権は消滅時効にかからない
・所有権は消滅時効にかかりません。166条は「債権」と「債権又は所有権以外の財産権」について定めており、所有権はそのどちらにも当たらないからです。
・したがって、長期間使っていない土地であっても、それだけで所有権を失うことはありません。
援用と時効の利益の放棄
・時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができません(民法145条)。期間が過ぎただけでは、当然に権利が消えるわけではないということです。
・消滅時効の援用ができる「当事者」には、債務者のほか保証人・物上保証人・第三取得者など、権利の消滅について正当な利益を有する者が含まれます(同条かっこ書)。
・また、時効の利益はあらかじめ放棄することができません(民法146条)。
【補足】お金を貸すときに「時効は援用しない」と約束させることを認めると、立場の強い債権者によって制度が骨抜きにされてしまうためです。
練習問題
・次の記述について、正しいか誤っているかを考えてみましょう。
| 記号 | 記述 |
| ア | 債権は、行使できると知った時から5年で時効消滅する。 |
| イ | 債権は、権利を行使できる時から20年で時効消滅する。 |
| ウ | 所有権は、20年間使わなければ時効で消滅する。 |
| エ | 時効は、援用しなければ裁判所が採用できない。 |
| オ | 時効の利益は、あらかじめ放棄することができる。 |
練習問題の解説
・解答は次のとおりです。
| ア | イ | ウ | エ | オ |
| ○ | × | × | ○ | × |
ア ○ 正しい
・知った時から5年で時効消滅します(民法166条1項1号)。
・これは債権者の認識を基準にする主観的な起算点です。もう1本の「行使できる時から10年」と早いほうで決まります。
・改正前の「10年」だけという知識のままだと誤ります。2本立てになっている点を押さえましょう。
イ × 誤り
・正しくは10年です(民法166条1項2号)。
・20年とされているのは「債権又は所有権以外の財産権」のほうです(同条2項)。
・例外として、人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権はこの10年が20年に伸びます(167条)。数字の入れ替えに注意しましょう。
ウ × 誤り
・所有権は消滅時効にかかりません。
・166条は「債権」と「債権又は所有権以外の財産権」だけを対象としており、所有権はどちらにも含まれないためです。
・正しくは「所有権は何年使わなくても消滅時効では失われない」です。他人の取得時効で失うこととは区別しましょう。
エ ○ 正しい
・当事者が援用しなければ、裁判所はこれによって裁判をすることができません(民法145条)。
・時効の利益を受けるかどうかは本人の意思に委ねる、という趣旨です。
・消滅時効では、保証人や物上保証人、第三取得者も援用できます。援用できる人の範囲もあわせて確認しておきましょう。
オ × 誤り
・時効の利益はあらかじめ放棄することができません(民法146条)。
・認めてしまうと、お金を貸す側が必ず放棄を条件にして、制度が意味をなくしてしまうからです。
・正しくは「あらかじめ放棄できない」です。時効が完成した後に放棄することは可能なので、時期の違いに注意しましょう。
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