出題の重要度 ★★★
「無権代理」をわかりやすく解説

無権代理とは?
・無権代理とは、代理権を持たない者が他人の代理人としてした行為のこと。
・代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしなければ、本人に対して効力を生じません(民法113条1項)。
第百十三条(無権代理) 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
【補足】代理の効果が本人に帰属するには代理権が必要です。その代理権がないまま契約してしまった場合が無権代理です。
本人の追認と追認拒絶
・本人は、無権代理の契約を追認することも、追認を拒絶することもできます。
| 本人の対応 | 効果 |
| 追認 | 契約の時にさかのぼって有効になる(民法116条) |
| 追認拒絶 | 本人に効力が生じないことが確定する |
・追認またはその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができません(民法113条2項)。無権代理人に伝えただけでは足りない、ということです。
【補足】追認の効果は原則としてさかのぼりますが、第三者の権利を害することはできません(民法116条ただし書)。

相手方がとれる3つの手段
・本人の返事を待つだけでは相手方が困るため、次の3つの手段が用意されています。
| 手段 | 内容 | 悪意の相手方 |
| 催告権(114条) | 本人に相当の期間を定めて追認するかどうかの確答を求める。確答がないときは追認を拒絶したものとみなす | できる |
| 取消権(115条) | 本人が追認しない間、契約を取り消す | できない |
| 責任追及(117条) | 相手方の選択に従い履行又は損害賠償を請求する | できない |
【補足】取消権は「契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたとき」は使えません(民法115条ただし書)。契約の時を基準に判断します。
無権代理人の責任
・無権代理人は、自己の代理権を証明したときまたは本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従って履行又は損害賠償の責任を負います(民法117条1項)。
・ただし、次の場合には責任を追及できません(同条2項)。
- 相手方が代理権のないことを知っていたとき
- 相手方が代理権のないことを過失によって知らなかったとき(ただし無権代理人が自己に代理権がないことを知っていたときを除く)
- 無権代理人が行為能力の制限を受けていたとき
無権代理と相続
・無権代理人と本人のどちらかが亡くなって相続が起きた場合の扱いは、判例で次のように整理されています。
| 誰が相続したか | 結論 |
| 無権代理人が本人を相続した | 追認を拒絶できない。自分がした行為の効果を自分で否定することは信義則に反するため |
| 本人が無権代理人を相続した | 追認を拒絶できる。ただし無権代理人の責任は相続する |
・代理の全体像は代理で確認してください。
練習問題
・次の記述について、正しいか誤っているかを考えてみましょう。
| 記号 | 記述 |
| ア | 無権代理の契約は、本人が追認すれば有効になる。 |
| イ | 追認の効果は、追認した時から生じる。 |
| ウ | 相手方は、代理権がないと知っていても催告できる。 |
| エ | 相手方は、代理権がないと知っていても取り消せる。 |
| オ | 無権代理人が未成年者なら、責任を追及できる。 |
練習問題の解説
・解答は次のとおりです。
| ア | イ | ウ | エ | オ |
| ○ | × | ○ | × | × |
ア ○ 正しい
・・そのとおりです。無権代理の契約は本人が追認しなければ効力を生じませんが、追認すれば本人に効力が生じます。
・「無効」と決まっているわけではなく、本人の返事しだいで有効にも無効にもなる状態です。
・「無権代理=当然に無効」とする選択肢は誤りです。追認の余地があることを押さえましょう。
イ × 誤り
・・誤りです。追認は、別段の意思表示がないときは契約の時にさかのぼって効力を生じます(民法116条)。
・はじめから代理権があったのと同じ扱いにするほうが、当事者の期待に合うためです。
・ただし第三者の権利を害することはできません。さかのぼるが無制限ではない、という点も押さえましょう。
ウ ○ 正しい
・・そのとおりです。催告権だけは悪意の相手方でも行使できます(民法114条)。
・本人に返事を求めるだけの行為であり、本人に不利益がないためです。
・確答がないときは追認を拒絶したものとみなされます。制限行為能力者への催告と逆になる点が狙われます。
エ × 誤り
・・誤りです。契約の時に代理権がないことを知っていた相手方は取り消せません(民法115条ただし書)。
・代理権がないと分かったうえで契約した人まで保護する必要はない、という考え方です。
・催告は悪意でもできる、取消しは悪意だとできない。手段ごとに結論が違う点を対で覚えましょう。
オ × 誤り
・・誤りです。無権代理人が行為能力の制限を受けていたときは、責任を追及できません(民法117条2項3号)。
・重い責任を負わせてしまうと、制限行為能力者を保護した意味がなくなってしまうためです。
・責任を追及できないのは、ほかに相手方が悪意のとき、過失によって知らなかったときです。あわせて覚えましょう。
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