出題の重要度 ★★☆
「代理権の範囲」をわかりやすく解説

代理権の範囲とは?
・代理権の範囲とは、代理人が本人に代わってすることのできる行為の範囲のことです。
・代理人がした行為の効果が本人に生じるのは、その行為が代理権の範囲内であるときに限られます(民法99条1項)。
権限の定めのない代理人ができること
・代理権を与えるときに「何をしてよいか」を決めていないことがあります。この場合、代理人は次の行為だけをする権限をもちます(民法103条)。
第百三条(権限の定めのない代理人の権限) 権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
一 保存行為
二 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
| 行為 | 内容 | 例 |
| 保存行為 | 財産の現状を維持する行為 | 建物の修繕、期限の来た債務の弁済 |
| 利用行為 | 性質を変えない範囲で収益を上げる行為 | 建物を人に貸す、現金を銀行に預ける |
| 改良行為 | 性質を変えない範囲で価値を高める行為 | 建物に造作を取り付ける |
【補足】売る・贈る・抵当権を設定するといった行為はここに入りません。物や権利そのものを失わせてしまう行為だからです。

自己契約と双方代理
・代理人が相手方の代理人にもなること(自己契約)や、当事者双方の代理人になること(双方代理)は、代理権を有しない者がした行為とみなされます(民法108条1項本文)。
・ただし、次の場合は例外として許されます。
- 債務の履行
- 本人があらかじめ許諾した行為
利益相反行為と代理権の濫用
・代理人と本人との利益が相反する行為も、代理権を有しない者がした行為とみなされます(民法108条2項)。こちらも本人があらかじめ許諾していればかまいません。
・また、代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で権限内の行為をした場合、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、やはり代理権を有しない者がした行為とみなされます(民法107条)。これを代理権の濫用といいます。
【補足】これらの効果は「無効」ではなく無権代理とみなされることです。したがって本人が追認すれば有効になります。
代理人は制限行為能力者でもよい
・制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができません(民法102条本文)。
・契約の効果を受けるのは本人であって、代理人自身が不利益を負うわけではないからです。そのような人を代理人に選んだのは本人ですから、本人が結果を引き受けることになります。
練習問題
・次の記述について、正しいか誤っているかを考えてみましょう。
| 記号 | 記述 |
| ア | 権限の定めのない代理人は、建物の修繕ができる。 |
| イ | 権限の定めのない代理人は、本人の土地を売ることができる。 |
| ウ | 代理人が売主と買主の双方の代理人になることは、原則としてできない。 |
| エ | 代理人が自分の利益のために権限内の行為をすれば、常に無権代理となる。 |
| オ | 未成年者を代理人にすることはできない。 |
練習問題の解説
・解答は次のとおりです。
| ア | イ | ウ | エ | オ |
| ○ | × | ○ | × | × |
ア ○ 正しい
・・保存行為にあたるのでできます(民法103条1号)。権限の定めのない代理人は、保存行為と、性質を変えない範囲の利用・改良行為ができます。
・建物の修繕は財産の現状を維持する行為で、本人に不利益になりにくいため、認めても差し支えないからです。
・「修繕」「未登記不動産の登記」「期限の来た債務の弁済」が保存行為の代表例として出ます。
イ × 誤り
・・正しくは売ることはできません。売却は物そのものを失わせる行為で、民法103条が挙げる保存・利用・改良のどれにもあたりません。
・利用行為や改良行為が認められるのも「性質を変えない範囲内」に限られるためです。贈与や抵当権の設定も同じく範囲の外です。
・「貸す」はよくても「売る」はだめ、と対にして覚えておくと迷いません。
ウ ○ 正しい
・・双方代理は代理権を有しない者がした行為とみなされます(民法108条1項本文)。どちらか一方に有利な契約になりかねないためです。
・ただし債務の履行と本人があらかじめ許諾した行為は例外として認められます。
・「無効になる」と書いてあれば誤りです。無権代理とみなされるだけなので、本人が追認すれば有効になります。
エ × 誤り
・・正しくは、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときに限って無権代理とみなされます(民法107条)。「常に」ではありません。
・何も知らない相手方まで巻き込むと取引が不安定になるため、事情を知っていた相手方だけが保護されない形になっています。
・「常に」「必ず」と言い切る選択肢は、この条文では誤りになりやすいので注意しましょう。
オ × 誤り
・・正しくは未成年者を代理人にすることもできます。制限行為能力者がした代理行為は、行為能力の制限を理由に取り消すことができません(民法102条本文)。
・契約の効果を受けるのは本人であり、代理人自身が不利益を負うわけではないからです。
・「代理人は行為能力者でなければならない」という記述は誤りです。本人が承知で選んだ以上、本人が結果を引き受けます。
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