出題の重要度 ★★☆
「制限行為能力者の相手方の保護」をわかりやすく解説

相手方を守る必要があるのはなぜ?
・制限行為能力者がした行為は取り消すことができます。しかし、取り消されるかどうか分からない状態がいつまでも続くと、取引の相手方が困ってしまいます。
・そこで民法は、相手方を守るために催告権と詐術の場合の取消権の否定という2つの仕組みを置いています。
催告権
・相手方は、1か月以上の期間を定めて、追認するかどうかを確答するよう催告できます(民法20条)。
・その期間内に返事がないときにどうなるかが、催告した相手によって変わります。
第二十条第一項 制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。

催告の相手と結果
・返事がないときの結果は、次のとおりです。
| 催告の相手 | 返事がないとき |
| 行為能力者となった本人 | 追認したものとみなす |
| 法定代理人・保佐人・補助人(権限内の行為について) | 追認したものとみなす |
| 被保佐人・被補助人本人(保佐人・補助人の追認を得るよう催告) | 取り消したものとみなす |
詐術を用いたとき
・制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができなくなります(民法21条)。
第二十一条(制限行為能力者の詐術) 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。
【補足】判例では、単に「自分は行為能力者だ」と黙っていただけでは詐術になりませんが、他の言動とあいまって相手方を誤信させたときは詐術にあたるとされています。
取消しができる期間
・取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないと時効で消滅します。また、行為の時から20年を経過したときも消滅します(民法126条)。
・「追認をすることができる時」とは、制限行為能力者であれば行為能力者となった時などを指します。
練習問題
・次の記述について、正しいか誤っているかを考えてみましょう。
| 記号 | 記述 |
| ア | 相手方の催告は、1か月以上の期間を定めて行う。 |
| イ | 行為能力者になった本人に催告し、返事がなければ追認とみなされる。 |
| ウ | 被保佐人本人に催告し、返事がなければ追認とみなされる。 |
| エ | 制限行為能力者が詐術を用いたときは、取り消すことができない。 |
| オ | 取消権は、追認できる時から10年で時効消滅する。 |
練習問題の解説
・解答は次のとおりです。
| ア | イ | ウ | エ | オ |
| ○ | ○ | × | ○ | × |
ア ○ 正しい
・・1か月以上の期間を定めて催告します(民法20条1項)。短すぎる期間では返事ができないためです。
・返事がないときにどうなるかは、誰に催告したかで変わります。
・「2週間以上」などと数字を変えたひっかけが出やすいところです。
イ ○ 正しい
・・追認したものとみなされます(民法20条1項後段)。すでに単独で追認できる立場になっているからです。
・返事をしないまま放っておいた以上、取消しはしないという扱いをしても不当ではない、という考え方です。
・「取り消したものとみなす」と書いてあれば誤りです。相手が誰かで結論が変わります。
ウ × 誤り
・・正しくは取り消したものとみなされます(民法20条4項)。被保佐人は単独では追認できないからです。
・単独で追認できない人が黙っていた場合まで追認扱いにすると、保護の意味がなくなってしまいます。
・単独で追認できる人なら追認、できない人なら取消し、と整理して覚えましょう。
エ ○ 正しい
・・取り消すことができなくなります(民法21条)。だました人を保護する必要はないからです。
・行為能力者だと信じさせるための詐術であることが要件になります。
・単に黙っていただけでは詐術になりませんが、他の言動とあいまって相手を誤信させたときは詐術になります。
オ × 誤り
・・正しくは5年です(民法126条)。10年ではありません。
・あわせて、行為の時から20年を経過したときも取消権は消滅します。
・「5年」と「20年」の2つがあります。どちらか一方だけを覚えていると引っかかります。
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