出題の重要度 ★★☆
「錯誤」をわかりやすく解説
錯誤とは?
・錯誤とは、表意者の思い違いによってされた意思表示のこと。一定の要件を満たすと取り消すことができます(民法第95条第1項)。

2種類の錯誤
| 種類 | 内容 | 例 |
| ① 表示の錯誤(第1号) | 意思表示に対応する意思を欠く錯誤 | 甲土地を買うつもりで、書き間違えて乙土地と書いてしまった |
| ② 基礎事情の錯誤(第2号) | 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤 | 近くに駅ができると思って土地を買ったが、その計画がなかった |
・②は動機の錯誤とも呼ばれます。②による取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限りすることができます(民法第95条第2項)。

取消しができるための要件
| 要件 | 内容 |
| ① 錯誤があること | 表示の錯誤(第1号)又は基礎事情の錯誤(第2号) |
| ② 重要な錯誤であること | 法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要であること |
| ③ (②の錯誤のとき)表示されていること | その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたこと |
| ④ 表意者に重大な過失がないこと | 重大な過失があるときは原則として取り消せない |
・もっとも、表意者に重大な過失があっても、次のいずれかにあたるときは取り消すことができます(民法第95条第3項)。
- 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき
- 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき
【補足】「重大な過失」とは、少し注意すればすぐに気づけたのに気づかなかったといえるほどの著しい不注意をいいます。単なる不注意(軽過失)があるだけなら取消しは妨げられません。
第三者との関係
・錯誤による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができません(民法第95条第4項)。
| 条文 | 第三者の要件 |
| 虚偽表示(第94条第2項)🔗 | 善意 |
| 錯誤(第95条第4項) | 善意でかつ過失がない |
| 詐欺(第96条第3項) | 善意でかつ過失がない |
| 強迫(第96条) | 第三者を保護する規定はない |
【補足】錯誤による取消権も、追認をすることができる時から5年間行使しないと時効によって消滅します。行為の時から20年を経過したときも同様です(民法第126条)。この期間の考え方は制限行為能力者🔗の取消権と同じです。
練習問題
・次の記述について、正しいか誤っているかを考えてみましょう。
| 記号 | 記述 |
| ア | 錯誤による意思表示は、取り消すことができる。 |
| イ | 錯誤による意思表示は、無効である。 |
| ウ | 勘違いが重要なものでなくても、取り消すことができる。 |
| エ | 表意者に重大な過失があるときは、原則として取り消せない。 |
| オ | 錯誤による取消しは、善意無過失の第三者に対抗できる。 |
練習問題の解説
・解答は次のとおりです。
| ア | イ | ウ | エ | オ |
| ○ | × | × | ○ | × |
ア ○ 正しい
・重要な錯誤があれば、その意思表示を取り消すことができます。改正前は「無効」でしたが、現在は取消しに改められています。
・無効だと誰からでもいつまでも主張できてしまい、相手方の立場が不安定になります。勘違いした本人が取り消すかどうかを選べる形にして、取引の安全とのバランスを取ったものです。
・「錯誤=無効」と書いてあれば、それだけで誤りと判断できます。改正点そのものが問われる頻出ポイントです。
イ × 誤り
・現在の民法では無効ではなく取消しです。取り消すまでは有効な契約として扱われます。
・改正前の民法95条は「無効とする」と定めていましたが、2020年施行の債権法改正で取消しに変わりました。古いテキストの記憶のままだと引っかかります。
・取消しなので、取り消せるのは表意者の側に限られ、追認もできます。取消権は追認できる時から5年、行為の時から20年で消滅します。
ウ × 誤り
・錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであることが要件で、重要でない勘違いでは取り消せません。
・些細な思い違いでいちいち契約をひっくり返せるとしたら、相手方はたまりません。表意者の保護と取引の安全の折り合いをつけるための要件です。
・動機(基礎事情)の錯誤では、さらにその事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたことも必要になります。心の中で思っていただけでは足りません。
エ ○ 正しい
・錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合は、原則として取り消すことができません。
・少し注意すれば気づけたのに気づかなかった人まで救うと、相手方が一方的に損をするからです。落ち度の大きい側は保護されない、という考え方です。
・ただし例外が2つあります。①相手方が錯誤を知り、または重大な過失で知らなかったとき、②相手方も同一の錯誤に陥っていたときは、重過失があっても取り消せます。
オ × 誤り
・錯誤による取消しは善意でかつ過失がない第三者に対抗することができません。対抗できる、が誤りです。
・勘違いした表意者の側にも落ち度があるので、事情を知らずに取引に入った第三者のほうを保護します。
・第三者の要件は制度ごとに違います。虚偽表示は善意のみ、錯誤・詐欺は善意無過失、強迫は第三者を保護する規定なし。この3段階で整理してください。
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